お知らせ
緩和ケアという治療の選択肢
「もう治療することはできないから、あとは緩和ケアですね」と言われてショックを受ける患者さんの話をよく伺います。「緩和ケアということは、あとは死ぬのを待つだけなんだ」と受け止められて、落ち込んでしまわれることも少なくありません。でも、緩和ケアは治療できないから、やむなく選択するものなのでしょうか?緩和ケアは死を待つだけの医療なのでしょうか?違います。つらさを和らげることで、体力が擦り減らないように心がけ、そして限りある人生かもしれないけれど、生きがいや目標を持って、生活の質を高めていくことには、間違いなく意味があります。
そもそもがん治療が終了してから受けるという考えすら違います。生活の質を高めることは、がん治療中から必要なはずです。がん治療中から緩和ケアを受けることの価値も、研究で証明されました。進行肺癌の患者は早期から緩和ケアを受けている方が、生命予後の延長効果が示されたのです。早期からつらさを和らげ、限られた人生をどう生きるかの相談を続けた結果、体力も温存され、より適切な治療の選択と中止により、生命予後も延長されたのです。これは日ごろ私が実感している、「適切な緩和ケアは生活の質を高めるばかりではなく、元気に過ごせる時間を長くできる」ことを裏付けてくれました。
そして、もちろん積極的な治療が望めない段階も、いつかは訪れるかもしれません。人は必ずいつか死ぬからです。このことから避けては通れません。であるならば、最期は苦しまずに過ごしたい。周囲に迷惑をかけずに過ごしたい。自分の希望する療養の場で過ごしたい。こういった願いを叶えるのもまた緩和ケアの治療です。
このサイトは、多くの人に緩和ケアという治療の選択肢を知ってもらい、正しく選択していただくために開設しました。皆さんのお役に立てることを願ってやみません。